1級建築施工管理技士 第二次検定【仮設計画・安全管理+工程管理】なぜ・比較・計算ミス分析+本試験問題5問
1級建築施工管理技士 第二次検定「仮設計画・安全管理(問題2)」「施工管理・工程管理(問題3)」を扱います。問題2は数値の丸暗記ではなく「なぜその数値・対策が必要か」の理解が記述の説得力を左右し、問題3(ネットワーク工程表)は解き方の型を機械的に再現できるかがすべてです。この記事では、留意点の理由づけと、計算過程を1ステップも飛ばさない解法手順を整理します。
1. 出題形式と学習優先度
| 問題 | 形式 | 配点イメージ | 対策の優先度 |
|---|---|---|---|
| 問題2(仮設計画・安全管理) | 記述式(留意点+理由) | 中 | 頻出テーマを型で覚える(得点しやすい) |
| 問題3(工程管理) | 記述式・計算式 | 中~高 | 計算問題は満点を狙う(パターンが限定的) |
2. 仮設計画の頻出項目(なぜその数値か)
| 項目 | 施工上の留意点 |
|---|---|
| 外部足場(枠組足場・くさび緊結式) | 壁つなぎの間隔を垂直5.5m以下・水平5.5m以下の目安内に設置し、手すり・中さん・幅木を設ける |
| 朝顔(防護棚) | 道路や隣地への飛来落下物を防止するため、必要な突出幅・段数を確保し、道路管理者・所轄警察署の許可を取得する |
| 養生シート・防音パネル | 強風時の飛散防止のため、たわみ・破損の点検を定期的に行う |
| 仮設ゲート・車両出入口 | 通学路・歩行者動線と重ならないよう配置し、誘導員を配置して歩行者・車両を分離する |
| 揚重計画(タワークレーン等) | 揚重能力(定格荷重)と作業半径を確認し、旋回範囲内の障害物・架空線との離隔を確保する |
| 仮囲い | 第三者の立入りを防止するため高さ1.8m以上を確保する |
なぜ壁つなぎは5.5m以下なのか:足場は単管・枠組を組み上げただけの自立性の低い構造物で、強風時には面で受ける風荷重が大きくなります。壁つなぎは足場を本体構造物に固定し、風による変形・倒壊を防ぐアンカーの役割を果たします。間隔が開きすぎると、足場が風圧でしなる・倒れるリスクが増すため、垂直・水平とも上限が定められています。
なぜ仮囲いは1.8m以上なのか:人の身長を超える高さにすることで、通行人が容易に敷地内を覗き込んだり侵入したりできないようにするためです。防犯性だけでなく、飛来物・落下物から第三者を隔てる境界としての意味も持ちます。
どこがひっかけなのか:壁つなぎの間隔を「垂直方向5.5m以下・水平方向5.5m以下」と覚えている受験者が、枠組足場と単管足場で異なる基準値がある点を見落とすことがあります(枠組足場は垂直9m・水平8m、単管足場は垂直5m・水平5.5mとされることが多い)。記述式では「概ね5m前後」という理解に留め、正確な数値は最新の労働安全衛生規則・手引きで確認してください。
3. 安全管理の頻出項目(災害類型と対策)
| 災害類型 | 対策のポイント |
|---|---|
| 墜落・転落災害 | 開口部・端部への手すり、幅木、安全ネットの設置。フルハーネス型安全帯着用の徹底 |
| 崩壊・倒壊災害 | 掘削工事における土止め支保工の設置、法面勾配の確保。型枠支保工の組立図に基づく施工 |
| 飛来・落下災害 | 朝顔・防護シートの設置、上下作業の禁止、開口部への蓋の設置 |
| 重機災害 | 作業半径内立入禁止措置、誘導員の配置、運転者の資格確認、作業計画書の作成 |
| 感電災害 | 仮設配線の点検、漏電遮断器の設置、高圧線近接作業時の絶縁防護管の設置 |
| 熱中症 | WBGT値の測定、休憩場所の確保、塩分・水分補給の徹底、作業時間の分散 |
なぜ「上下作業の禁止」が重要か:上の階で工具や資材を落とした場合、下で作業する人員に直撃するリスクがあり、対策(ネット等)を講じても完全に防げるとは限りません。上下作業そのものを避けることが、対症療法(防護ネット)より根本的な対策(発生源対策)になるためです。この「発生源対策(なくす)→工学的対策(防ぐ)→管理的対策(注意喚起)」という優先順位の考え方は、安全管理の記述全般で使える論理構造です。
4. 問題2の解答の型
「~に関して、施工上留意すべき事項を2つ記述せよ」という形式が多く、次の3ステップで書くと過不足なくまとまります。
- 項目名(何についての留意点か)を明確にする
- 具体的にどうするか(数値・手段)を書く
- その理由・目的を一言添える(「~を防止するため」等)
例:「外部足場の壁つなぎは、垂直方向・水平方向とも所定の間隔以下で設置し、強風時の足場の変形・倒壊を防止する。」
どこがひっかけなのか:理由を書かずに「~を設置する。」で終わる答案は、②までしか満たしておらず、③(なぜ必要か)を書かないと部分点止まりになりがちです。「留意点」を問う設問は、暗に「その理由も分かっているか」を試しています。
5. バーチャート工程表と出来高累計曲線
バーチャート工程表は縦軸に工種、横軸に工期をとり、各工種の作業期間を横棒で示します。
- 出来高累計曲線(Sカーブ・バナナ曲線):予定と実績の出来高曲線を比較し、遅延・進捗過多を読み取る
- 労務・資機材の山積み(山崩し):特定期間に作業が集中していないかを確認し平準化の要否を判断する
バナナ曲線の考え方:予定進度曲線の上方・下方許容限界線(バナナの形をした帯)を設定し、実施出来高曲線がこの帯の中に収まっているかで進捗の適否を判断します。なぜ「上方超過」も問題なのか:一見、工程が進みすぎているのは良いことに思えますが、後工程の準備(検査・資材搬入)が追いつかず、品質確保やコスト面(資機材の早期投入による割高な調達)に支障が出る場合があるためです。「進みすぎも遅れも、どちらも管理上の異常」という視点が記述問題での加点ポイントです。
6. ネットワーク工程表(アロー型)の基本ルール
| 用語 | 記号 | 意味 |
|---|---|---|
| 最早開始時刻 | EST | その作業が最も早く開始できる時刻。前工程の最早結合点時刻のうち最大値を採用する |
| 最早完了時刻 | EFT | EST+作業日数 |
| 最遅完了時刻 | LFT | 全体工期に影響を与えずに完了できる最も遅い時刻。後工程の最遅結合点時刻のうち最小値を採用する |
| 最遅開始時刻 | LST | LFT-作業日数 |
| トータルフロート | TF | その作業が持つ余裕日数の最大値(LFT-EST-作業日数) |
| フリーフロート | FF | その作業を遅らせても後続作業の最早開始に影響を与えない範囲の余裕日数 |
| クリティカルパス | CP | フロートがゼロの作業を結んだ、始点から終点までの最長経路。全体工期を決定する |
TFとFFは何が違うのか(比較):TF(トータルフロート)は「その作業単独が使える最大の余裕日数」で、後続作業に影響を与える場合もあります。FF(フリーフロート)は「後続作業の開始時刻に一切影響を与えずに使える余裕日数」です。TF≧FFが常に成立し、TF=0ならFFも必ず0になります。記述問題で「ある作業のフロートを使うと後続作業にどう影響するか」を問われたら、TFとFFの違いに触れると加点されやすくなります。
7. 計算の手順(型)
- ①前進計算(最早結合点時刻の算出):開始点を0とし、各結合点について「流入する全ての作業の(最早結合点時刻+作業日数)」のうち最大値をその結合点の最早時刻とする
- ②後進計算(最遅結合点時刻の算出):終了点の最遅時刻=最早時刻(全体工期)とし、逆向きに「流出する全ての作業の(最遅結合点時刻-作業日数)」のうち最小値をその結合点の最遅時刻とする
- ③トータルフロートの算出:TF=(後続結合点の最遅時刻)-(先行結合点の最早時刻)-作業日数
- ④クリティカルパスの特定:TF=0となる作業を線でつなぐと、それがクリティカルパスとなる
なぜ前進計算は「最大値」、後進計算は「最小値」を採るのか:前進計算では、複数の経路が1つの結合点に合流する場合、すべての経路が完了しないとその結合点の作業を開始できないため、最も遅く到達する経路(最大値)が全体を律速します。後進計算では逆に、複数の経路が1つの結合点から分岐する場合、どの経路も工期内に収める必要があるため、最も厳しい(最小値)の制約に合わせる必要があります。この「合流は最大値、分岐は最小値」という非対称性が、計算ミスの最大の原因です。
8. 演習:ネットワーク工程表の計算例
| 作業 | 先行作業 | 所要日数 |
|---|---|---|
| A(①→②) | なし | 3日 |
| B(①→③) | なし | 5日 |
| C(②→④) | A | 4日 |
| D(③→④) | B | 2日 |
| E(④→⑤) | C・D | 3日 |
前進計算:①=0。②=0+3=3(Aのみ流入)。③=0+5=5(Bのみ流入)。④=流入するCとDのうち大きい方=max(②+4, ③+2)=max(7, 7)=7。⑤=④+3=10。よって全体工期は10日。
後進計算:⑤=10。④=10-3=7。③=④-D(2)=7-2=5。②=④-C(4)=7-4=3。①=流出するAとBのうち小さい方=min(②-3, ③-5)=min(0, 0)=0。
トータルフロート:A・B・C・D・EすべてTF=0(CP)。この例では両経路(A→C→E、B→D→E)がともにクリティカルパス(工期10日)となります。
9. 出題パターンの類型と、よくある計算ミス
- 基本計算型:上記のような前進・後進計算で全体工期とクリティカルパスを求める
- 遅延影響型:「ある作業がX日遅延した場合、全体工期は何日延伸するか」。フロートがゼロの作業ならそのままX日延伸、フロートがある作業ならフロートを超過した分だけ延伸する
- 短縮検討型:「工期をY日短縮するには、どの作業を短縮すべきか」。クリティカルパス上の作業を短縮しなければ全体工期は縮まらない(非クリティカルパスを短縮しても無意味)という原則を問う
よくある計算ミス:①合流点で最大値でなく最小値を取ってしまう(前進計算) ②分岐点で最小値でなく最大値を取ってしまう(後進計算) ③フロートがある作業を「遅延させても工期に影響しない」と誤解し、遅延日数がフロートを超えている場合の延伸を見落とす ④非クリティカルパス上の作業を短縮して「工期が縮まった」と誤答する。
10. 本試験レベル問題(5問・全問解説付き)
- Q. 上記の演習例で、作業C(所要日数4日)が2日遅延した場合、全体工期は何日になるか。
A. 12日。作業CはクリティカルパスA→C→E上にあり、TF=0のため遅延がそのまま全体工期に反映される。②→④の経路が7日→9日となり、⑤=9+3=12日。 - Q. 同じ演習例で、作業D(所要日数2日)が1日遅延した場合、全体工期に影響はあるか。
A. 影響なし。作業DはB→D→E経路上にあり、この演習例ではB→D→EもクリティカルパスでTF=0のため、本来は1日遅延すればそのまま工期に影響するのが原則。ただし、もし仮にDに余裕(TF>0)があれば、その余裕内の遅延は工期に影響しない。フロートの有無を必ず確認してから判断すること。 - Q. クリティカルパス上の作業を1日短縮した場合、必ず全体工期は1日短縮されるか。
A. 短縮後に他の経路が新たなクリティカルパスとして工期を決定する可能性があるため、必ずしも1日そのまま短縮されるとは限らない。短縮後に全経路のフロートを再計算する必要がある。 - Q. トータルフロートとフリーフロートの違いを説明せよ。
A. トータルフロートはその作業単独が持てる最大の余裕日数(後続作業に影響を与えてよい)。フリーフロートは後続作業の最早開始時刻に一切影響を与えない範囲の余裕日数。TF≧FFの関係が常に成り立つ。 - Q. 非クリティカルパス上の作業を短縮しても全体工期が変わらないのはなぜか。
A. 全体工期はクリティカルパス(最長経路)によって決まるため、それより短い経路上の作業をいくら短縮しても、最長経路の所要日数を下回らない限り全体工期には影響しないから。
11. 工程遅延時のリカバリー対策(記述問題対応)
- 作業員の増員による工期短縮(ただし作業スペース・安全性への影響を考慮する)
- 作業時間の延長(残業・二交代制の導入)
- 並行作業化:本来直列で行っていた工種を、安全・品質に支障のない範囲で並行実施する
- 工法の変更:現場打ちからプレキャスト部材への変更等、より短工期の工法へ切り替える
- 資機材・揚重機の増強:搬入・揚重のボトルネックを解消する
なぜ「増員」が万能ではないのか:作業スペースには限りがあるため、人数を増やしても互いの作業が干渉し、かえって効率が落ちる場合があります(この現象は「工程圧縮の限界」と呼ばれることがあります)。記述問題では、対策を書くだけでなく「ただし作業スペースを考慮し、過度な増員は避ける」のような留保を添えると、実務的な理解を示せます。
12. 直前暗記チェックシート
- □ 壁つなぎ間隔の目的(強風時の変形・倒壊防止)を説明できるか
- □ 仮囲いの高さ1.8m以上の理由(第三者の立入り・覗き見防止)を説明できるか
- □ バナナ曲線で「進みすぎ」も問題になる理由を説明できるか
- □ 前進計算は最大値、後進計算は最小値を採る理由を説明できるか
- □ TFとFFの違いを、後続作業への影響の有無で説明できるか
- □ クリティカルパス上の作業とそれ以外の作業で、遅延の影響がなぜ違うのか説明できるか
13. 今日の学習導線
- 演習のネットワーク図を、何も見ずに自分の手で前進計算・後進計算・TF算出まで再現する
- 本試験レベル問題5問を解き、間違えた問題の「なぜ」を読み直す
- 問題2の頻出項目を「留意点+理由」の型で3つ、口頭で説明してみる
- 翌日、異なる作業数・日数のネットワーク図を自作し、同じ手順で計算できるか確認する
※本記事は資格学習の要点整理を目的とした個人メモです。数値基準(壁つなぎ間隔等)は労働安全衛生規則・関連告示の改正により変わる場合があるため、受験前に必ず最新の公式教材でご確認ください。
1級建築施工管理技士 対策シリーズ一覧
総合
第一次検定
第二次検定
- 完全対策テキスト(全6回の目次)
- 施工経験記述(10要素フレームワーク)
- 仮設計画・安全管理+工程管理(この記事)
- 躯体工事(正誤判定演習20問)
- 仕上げ工事
- 建築法規
- 総仕上げ・直前対策(最終確認テスト20問)
まず「合格バイブル」で全体像をつかみ、第一次検定は①〜③、第二次検定は経験記述から順に取り組むのがおすすめです。
コメント
コメントを投稿